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最近、海の魚が獲れなくなったという話をよく聞きます。大型の漁船がやってきて一網打尽に魚を獲ったり、水質汚染だったり、埋め立てで沿岸の漁場がなくなり魚がいなくなったり、原因は様々ですが、温暖化も魚が減った原因の一つと言われています。
二酸化炭素などによる温暖化の影響で、日本近海では海面の温度が0.7~1.6℃も上がっています。水は、温度が高くなると軽くなります。したがって、温度が上昇した海面の水は、深層水と混ざりにくくなります。このため、栄養分がたくさん含まれる深層水が海面近くに上がって来にくくなり、プランクトンが育ちにくいので、それを食べる魚が減ったという研究者もいます。
魚は、海の中でも餌のあるところ、生きやすいところに住みます。魚によって、快適な温度帯というものがあり、温暖化によって海面温度が上がれば、魚の住む海域も変わってゆきます。例えば、九州や瀬戸内海など温暖な海でよく獲れたサワラは、日本近海の海水温が上昇したことで、より北の地域で獲れるようになっています。
2006年にアメリカの科学雑誌「サイエンス」に掲載された論文で、「2048年には海から食用魚がいなくなる」と発表されました。その原因は、乱獲と海洋汚染と、そして温暖化です。地球温暖化の熱を吸収して、その上昇を抑える役割を担っているのは、海です。しかし、それによって海水温は少しずつ上昇を続けています。このまま海水温が上がれば、魚たちが快適に暮らせる海はどんどん狭まっていくでしょう。そして、やがて、魚は獲れなくなります。
現在、世界では魚を食べる人が増えています。しかし、天然物の漁獲高はずっと横ばいのままです。それも、やがて下降ラインを辿っていくでしょう。日本の食文化に、魚は欠かすことができない大きな存在です。でも、このままだと、その文化を後の世に伝えていくことも難しくなるかもしれません。
episode 11
魚が食べられなくなる。