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episode 10

農作物が育たない。実らない。

温暖化によって、農作物にはいい影響があるという人がいます。たしかに、二酸化炭素の濃度が高まると、それを吸収して育つ農作物は、より実って、採れる量が増えるというメリットがあります。しかし、気温が上がり、耕作に適した農地が減ったり、大雨、洪水、干ばつなどの異常気象のために田んぼや畑が被害にみまわれ、生産量が少なくなるというデメリットも考えなくてはなりません。

地球温暖化の影響を、世界の農業でみてみましょう。

ヨーロッパの場合は、北と中央と南でそれぞれ異なります。北ヨーロッパでは農産物生産量が増加し、森林の成長も促されると予測されますが、一方で冬の間に洪水が増え、生態系がおびやかされ、農地が荒れて、むしろマイナスと予測されます。中央ヨーロッパや東ヨーロッパでは、夏の降水量が減り、水不足が農作物に影響するでしょう。南に下ると、高温や干ばつの影響はさらに深刻化し、農作物の生産量は減ると予想されています。

アジアでは人口が密集しているデルタ地帯で洪水が増加、食料不足によって途上国での飢餓が継続します。オーストラリア・ニュージーランドの農業国でも降水量が減り水不足の深刻化と増加する干ばつと火事のために、農業・林業の生産量が減少すると予測されています。

日本は南北に長い国なので、九州と北海道の間で農作物を育てる場所を変えれば温暖化の影響を少なくすることができるかもしれません。では、農林水産省の温暖化による予測を見てみましょう。米の収量は北海道だけで増加し、それ以外の地域では減少。りんごの栽培は徐々に北上し、北海道の全域が適地になる一方で、関東より南は栽培に適さなくなる。鶏の産肉量は、西日本で大きく低下する。サンマの漁場は、北海道東部の根室沖だが、100年後は日本近海では獲れなくなる。以上が、農林水産省の将来予測です。実際にサンマの漁場は、すでに根室沖からはるか東の太平洋上に遠ざかっています。

農業・畜産業・林業そして漁業は、自然を相手にするものです。地球温暖化が進めば、地球全体を見た場合に、悪影響の方がはるかに大きく、食糧不足という形で私たちの暮らしに大きなダメージをもたらします。


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農作物が育たない。実らない。