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雨がたくさん降ったことで海の水がいっぱいになることはありません。雨は、陸と海と空の間で循環している水の一部で、その総量は変わらないからです。問題になるのは、陸地の氷や長い間に降り積もった雪です。それらが溶けてこの循環の中に加わった時です。
episode 5
でも紹介したように、およそ200万年前からあるヨーロッパアルプスの氷河は、2019年の夏、わずか2週間で消えてしまいました。北極圏の陸地であるグリーンランドやアラスカの氷や雪が溶けています。南極大陸では、最も緯度の低い南極半島の氷河が溶け続けています。それらが海に流れると、海水の量が増えて水位が上がります。また、温暖化の影響で海水温が高くなっていることはわかっていますが、水は温度が高くなると体積が増えます。おおげさにいえば、海が膨張するのです。
2019年、イタリアの水の都ベネチアは、観測史上2番目の高潮に見舞われ、特に海抜が低いサン・マルコ広場などが深刻な被害を受けました。市長は地球温暖化による気候変動が原因だとして、このままだと街が沈んでしまうと、政府に一刻でも早く対応を求めました。
南太平洋の島国であるツバルは、サンゴ礁の島が連なっている国で、海抜は最も高い所でわずか5メートルです。ここでは年々潮位が上がっており、特に、ここ数年の全地球の平均海面上昇速度が1.2〜2.2mmであるのに対し、4.3mmとその上昇率は高くなっています。ツバルは日本よりも人口密度が高く、人々は狭い島に寄り添うように暮らしています。2003年、高波が島を襲いました。海水が島を洗い、住んでいるところはもちろん、農園が被害にあい、食べ物にも困る状態になりました。この国の人々はほとんど二酸化炭素を排出していません。でも、彼らは住む場所も畑も奪われようとしているのです。
episode 8
街が沈む。国が沈む。